新卒1年目、企業研究者としての半年を振り返る

大学院生向け

 お越しいただきありがとうございます。カルフです。地方国立大の博士課程を修了し、現在は化学メーカーで研究開発をしています。早いもので、2020年ももう10月に入りました。私が今の会社に入り、企業研究者として半年が経ったことになります。そこで、今回は博士卒1年目で企業研究者となった私の半年を振り返ろうと思います。コンテンツは、

4~5月:オンライン研修
6~7月:研究開始
8~9月:実験数 vs 方向性
10月~:これから

です。それでは今回も1つずつ見ていきましょう!

4~5月:オンライン研修

 コロナ禍で始まった私の社会人生活。大学の卒業式はもちろん、会社の入社式も無くなり、9年ぶりに実家での生活がスタートしました。例年は新人みなで行っていた研修も実家からオンラインで受けていました。与えられた課題をポチポチと終わらせていた1週目に人事の方から辞令の電話を頂き、自分が研究の部署に配属となったことを告げられました。私が企業で研究を続けられる確率は勝手に五分五分と踏んでいたので、辞令を聞いた時は「おっ、企業でも研究できそうだな。」と単純に思ったことを覚えています。どちらかと言えば、嬉しい気持ちが勝っていたでしょう。
 辞令を受けた後もオンラインでの研修が続きましたが、内容が全体研修から部署ごとへ分かれていきました。4月の後半には、すでに研究職のメンバーだけで研修を受けていましたね。まだオンライン上だけでしか話をしたことのないメンバーだったのですが、不思議と同期との絆は深まっていったと思います。このご時世ならではのオンライン飲み会も何度も行いました。研究職のメンバーだけでなく、数百人いる同期全体にも声をかけて行ったりもしました。先輩社員の方からは「今年の新人は他地区の同期との繋がりが薄くて可哀そう」と言われもしましたが、とんでもない。オンラインでなければ、あんなに多くの同期と知り合うことは難しかったと思います。全国にいる各地区の同期と早く顔を合わせて話してみたいです。
 GWも明けた5月中旬、遂に実家から配属地へ向かう時がやってきました。期待と不安を胸に、私は企業の研究者として歩みを進めることになります。

6~7月:研究開始

 6月頃から本格的に現在の研究所で働き始めました。研究所に来て初めて自身のミッションを上司に明かされ、私が大学時代に行っていた研究分野と似た内容を担当することを知ったのです。正直、もっと早めに教えてほしかったです(笑)。そこから、研究所のルールや基礎実験を先輩方に教えてもらい、徐々に自分の考えの元で研究を進められるようになりました。この際に感じたことが1つありました。それは、

「企業でもバリバリ研究できるじゃん!」

ということです。博士課程に在籍していた時の企業研究者のイメージは、「無駄な会議や書類作成に忙殺され、実験ままならない生活」だったのですが、そんなことはありませんでした(会議・書類作成が無いとは言ってない…笑)。論文・特許を読み、現時点よりも高性能の物質を得られるよう、戦略を練るところから、可能な限り実験数を稼ぐところまで、十分に研究を楽しめる環境にいたと思います。就活生のよく言う「裁量権が欲しい」という考えは研究職にぴったりかもしれません。安全に関する規則を破らない範囲であれば、自分で闇実験を仕込めますからね(笑)。
 事務的に苦労したことはいくつかあります。まずは書類の作成です。実験開始当初は、上司から毎週のように週報の中身について指導を受けました。「明らかとなった全て事実を淡々と書くのでなく、研究チームとして共有すべきことを書きなさい」という指導が重要なポイントだったかなと思います。やったことを全部書かなきゃ、という意識を是正する必要があったのです。また、実験を行う際の危険予知も重要でした。私の出身研究室は大学のにしては安全に細かい研究室だったので、すぐ慣れはしましたが、大学よりもはるかに厳しい安全検討が必要でした。初めて行う予定の実験には複数人の上司のハンコが必要ですし、労災なんて起こそうもんなら、研究所全体の実験が止まってしまいます。隣の部署の部長に言われたのは、交通事故や労災の当事者になると相当凹むということです(笑)。絶対に労災は起こさないという想いは確実に根付いて来たと思います。

8~9月:実験数 vs 方向性

 研究所のルールや実験にも慣れ、本格的に研究を進めるフェーズになってきた8月頃から、1つの悩みが出てきました。それは「成果主義になり切れていない自分」に気付き始めたことです。ここが大学と企業の研究で最も異なる部分かもしれませんね。大学では知的好奇心のままに研究を進めていき、その結果、役には立たないものの新たな真理を発見すれば、それが自ずと業績(論文)となります。一方、企業では明確に超えないといけない性能があり、自分の仕事はその性能にどれだけ近づけられたかで評価されます。私は可能な限り実験数を仕込むだけで、性能向上にはあまり貢献できていませんでした。事実、リーダーが部長等へ報告する資料の中に、私の実験に関する報告はあまりなく、先輩方の結果ばかりが記載されていました。
 私が悩んでいることを上司に相談したところ、「方向性をしっかりと見極めなきゃダメだよ。」という指導をしていただきました(相談できる環境に自分がいることに感謝したいですね)。本当にその通りだと思います。がむしゃらに実験をするだけでは成果が出ないことは、この4か月で十分明らかになっていたので、日々の実験の工数を減らしてでも、方向性を考える時間を取らないといけないなと思いました。

10月~:これから

 入社してからの半年は、もちろん色々ありましたが、あっという間でした。それだけ毎日が充実していたっていうことですかね?(笑)。まだ何も目に見える成果を出せていない私ですが、あと半年で1年目が終わり、キラッキラの新人ブランドが終わってしまいます。博士卒の私は周りの同期よりも3年遅れているという意識で仕事をしています。さらに、私は出身大学から今の会社の研究職へ入った初めての人間ですので、私の仕事の出来具合でこれから先、同じようなレベルの大学生の未来が少しは変わると勝手に考えており(笑)、何としても成果を出したいところです。
 ということで、これからの自分の目標を記しておこうかなと思います。

短期(今年度):最短数の実験で成果を出す
中期(~3年後):テーマ立案~プロセス設計までを一貫してできる人材になる。自身が研究職に向いているのかを判断してキャリアを考える

まずは、「成果を出す」ことにこだわりたいですね。シンプルに最高性能のモノを自分の手で生み出したいです。じゃないと自分の存在意義がありません。次の目標も大事かなと思います。企業の研究者は「どれだけ儲けられるか」を求められます。そのために立案~設計までを担う能力が必須だと考えています。そして、その後が意外かもしれませんね。私はまだ自分が研究者を続けるべきかどうか、決めきれていません。というのも、研究でまだ成果を出せていないので、自分に研究者が向いているか判断しかねている部分があるのです。ここは近いうちに上司に相談しようかなと考えています。研究職に固執して企業に入ったわけではないので、冷静に自分の能力を見て、判断しようかなと思います。いつか、ブログでもお知らせできるといいな~。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか?現在M1やD2の学生の方はこれから就活が始まってくると思います。手を挙げないと決してなれない職業ですので、現時点で研究が好きならば、ぜひ研究職を希望してほしいと思います。何事も実験実験。ではでは~。

プロフィール
calf

受験で挫折 → 地方国立大 → 首席 → 日本学術振興会特別研究員DC2 → 博士号取得 → 企業研究職│学会受賞6件│無機化学│危険物甲種│高圧ガス(甲種化学) │

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