学振が私にくれたもの

2020年7月15日

 お越しくださりありがとうございます。カルフです。国立大の博士課程を修了後に大手化学メーカーで研究開発をしています。今回は博士課程の間に務めていた日本学術振興会の特別研究員(以下、学振)が低偏差値大学にいた私に与えてくれたモノについて記そうと思います。先に内容をまとめると、

・(はじめに)学振とは?
・研究室の士気の上昇
・1人で生活する経済力
・大学名を抜いた評価
・他大学の友達
・自尊心

です。それでは1つずつ見ていきましょう!

(はじめに)学振とは?

 大学院の世界を知らない方には、まず簡単に学振の説明をした方がいいと思います。意味わからないですよね(笑)。日本学術振興会は文部科学省の下にある独立行政法人の1つです。文理を問わず、日本の学術研究を促進させるために色々してくれています。その中でも最重要なのが、審査を通して適切な大学教員等の人財に研究費を配ることです(正直それ以外の仕事内容をあまり知りません)。そして、その一環として、博士課程進学者を支援するために、優秀な博士課程進学者に対して月20万円の返済不要の奨学金を与える、”特別研究員”を毎年募集しています。この特別研究員に採用された方たちを慣例的に”学振”と呼んでいます。改めて説明してみると、なんで組織の略称が使われているんですかね?天才たちを指す言葉のはずなのに、略し方がちょっぴりアホですね(笑)。さて、全国の博士の学生たちが学振に毎年応募するわけですが、採用率は高くて20%です。この数字は学術振興会のwebで全て公開されています。こんな枠は旧帝大の博士でほぼ埋まるので、私のような低偏差値大の学生が採用されるのは稀です。ゆえに学振が私に与えてくれたモノは、旧帝大の博士がもらえるそれとは異なってくると思うんですよね。さあ、それでは以下をご覧ください。

研究室の士気の上昇

  これは私のいたような大学ならではだと思います。地方大の研究室に博士がいること自体が珍しいのですが、その学生が学振に選ばれた場合、学内での評判が爆上がりします。それに加え、学振は採用者に月20万の奨学金とは別に、年間で最大100万円の研究費も与えられます。地方の国立大は研究費が潤沢でない場合が多いので、この研究費が入るのはかなり助かるんですよね。以上のようにたくさんのメリットがあるので、博士の学生が学振に採用されると、教授を含め、研究室のメンバーの士気が一気に上がります。もちろん本人のやる気も上がります!

1人で生活する経済力

 これを抜かすことはできません。同期は就職してお金を稼ぎ、税金を納め、完全に自立しているのに対して、大学に残って授業料を払い、研究を続けるのは経済的にきつすぎます。学振はそこの不安をほとんど解消してくれます。親に仕送りをもらう必要もありません。私は学振からもらった奨学金で親にご馳走することもできました。良い思い出です。

大学名を抜いた評価

 これも嬉しいですね。修士になって学会へ行った際は、大学名だけで私を見下してくる輩が何人もいましたが、学振採用後はそんな人間に出会うことはなくなりました。大学名なんて全く関係のなくなるぶっちぎりの業績ですからね。学会要旨集の所属にも学振が刻まれるので、学会発表でも勢いがつきますし、就活でも研究力の高さを示す強力な業績となります。学振の力を無視して馬鹿にしてきたり、学振自体を知らない研究者はモグりですので、関わらない方が良いです。

他大学の友達

 上で述べたことと絡んでくる内容です。私がいたような大学の学生は、学振に採用されるまでの苦労が半端ではないです。高校時代に勉強を頑張れなかったツケを死ぬほど払う羽目にあいます(笑)。その分採用された際の嬉しさも半端ではない大きさとなります。そして、それは旧帝大の学生でもかなり大きいのです。そんな学生たちは学会で学振仲間と出会うと、自然と仲良くなります。私も学会で知り合った学振仲間とは、学会の度に2時くらいまで飲みに行っていた記憶があります(笑)。申請時の苦労をお互いに知っていますからね。本当に仲間なんです。

自尊心

 ここまで色々述べましたが、正直私のような人間にとってはこれが一番大きかったです。他のモノがただの建前に見えるほどです。同期は早々と就職し、日本に貢献しているのに対し、大学名のブランドも無く博士学生として実験を続けるという状況は精神的に本当に辛かったです。そんな私に学振は、博士の学生としての自尊心を与えてくれました。採用されてからは精神的に余裕を持って研究を続けられました。本当に感謝します。
 ただ、自分のように苦しんだまま博士課程を終える(この”終える”には色々な意味が含まれます…)学生が全体の8割近くいることが辛いです。そして、そのような学生にはぜひtwitterを始めてほしいです。私は最後の春休みに始めましたが、「学生時代に始めておけばよかった…」と本当に後悔しました。気軽に全国の博士学生と繋がることができます。所属するコミュニティの数を増やすことは心理的な不安を和らげる効果があると聞いたことがあります。日本の大学事情が良くない中で、博士課程に進学した時点で、研究に対して素晴らしい熱意を持っているはずなので、自信をもって研究を続けてほしいです。

 いかがでしたでしょうか?学振に通った際のメリットは誰もが分かるとは思うのですが、書き出してみると、実際に通った人にしか分からないだろうなということが多かったです。そして、学振に通らなかった人が精神衛生を保ったまま研究ができる日本であってほしいと願っています。大学院に無縁の方には、博士課程のことを少しでも知っていただけたのであれば幸いです。ではでは~。