お越しいただきありがとうございます。カルフです。地方国立大の博士課程を修了し、現在は化学メーカーで研究開発をしています。今回は就活で必須となる企業研究のテクニックをご紹介します。社会人になってから「就活生の時にこう動いておけば良かったのかな~?」と感じることが多いので、学生の方には新鮮な視点が提供できるかもしれません。「企業研究って企業のHPを見るだけでいいんじゃないの?」と思っている方や、「そもそも企業研究ってどうやるの?」という方の参考になれば幸いです。ぜひご一読ください。
さて、本日のコンテンツは、
・企業のHPで勤務地を見る
・”IR BANK”で会社の主要情報を調べる
・企業HPで中計を読む
・「会社名」+「キーワード」で特許を調べる
・学会等で従業員から直接話を聞く
です。1つずつ見ていきましょう!
企業のHPで勤務地を見る
大抵の就活生の本音を代弁すると、会社選びのポイントはほぼ
・「勤務地」
・「給料」
だと思いますが、いかがでしょう?(笑)もちろん「その会社に入って何をしたいか」、「どんな人と働きたいか」等も重要なんですが、ガチャ要素が大きいんですよね。そして、勤務地もガチャ要素の筆頭に挙げられる項目です。しかし、これは会社に入る前から候補が分かるので、会社のHPに行って勤務地を確認し、「最悪、自分はここに配属されても大丈夫(辞めない)か?」を必ず自分に聞いておくことをお勧めします。Twitter上ではしばしばメーカー僻地勤務者の絶望の声が聞こえてきます。仮に、上記の質問に「No」となるようであれば、その会社を受けることはやめておいたほうが賢明でしょう。
一方で、自身がその会社に入れた場合、どこに配属される可能性が高いのかを調べておくことも重要です。「そんなのどうやって調べるの?」と思うかもしれませんが、それは本記事で紹介している各テクニックを駆使すればある程度可能だと考えています。実際、私は会社を受ける前から「ここに配属されそうだな~」という予想を持っており、実際にそこに配属されました。(博士故に専門性が高く、予想が当たる可能性が高かったとは思いますが。)簡単に説明すると、「自身の専門性」と「会社のセグメント別売上」と「会社の中計」から予想します。
また、会社によっては「勤務地採用」枠があります。これは面接の段階で「あなたが内定した場合、〇〇に配属する予定です。」と伝えられているやつですね。相当恵まれている制度ですし、優秀な人材を1本釣りできる大企業にありがちなものです。これは就活サイト上や説明会で表に出てこない情報なので、自身の持つ情報網(おそらく先輩の繋がりが第一)が大事になります。私は学会繋がりの友人にこの存在を聞いたことがあります。
“IR BANK”で会社の主要情報を調べる
はい、いきなり学生が知らないであろう単語が出てきました(笑)。これは社会人になり、且つ”株”に手を出した人間でないとまず訪れることのないサイトです(笑)。真面目に勉強してきた化学系の学生にとって”IR”はもちろん”InfraRed(赤外線)”で正解ですが、ここで言うIRとは、”Investor Relations (投資家へ提供する企業情報)”のことです。会社が投資家に向けて「弊社の売り上げや財務状況はこんな感じです」と発表している資料ですね。投資家の人は、こういった資料を読み込んだ上で「この会社は伸びるか否か」を判断することで、その企業の株の売買を決めているわけです。そして、IR BANKは各企業のIRをまとめてくれているサイトです。
IR BANK:https://irbank.net/
もちろん各企業のHPの「投資家の皆様へ」の欄にIR情報はあるのですが、会社ごとに様式が異なるのでとにかく見にくいです。一方IR BANKを使うと、すべての企業に関して、同じ書式で就活生が気にするであろう、
・セグメント別の売り上げ
・従業員の平均年齢、平均年収、平均勤続年数
・従業員数
・研究開発費
等に関して5~8年の推移を簡単に見る事ができます。本当に便利です。就活で利用しない手はありません。もちろん無料です。
ここで重要なポイントは「推移」を見るということです。少し話が脱線するかもしれませんが、大抵の人はHP上の直近の値しか見ていない場合が多く、うっすい情報しか手に入れていない印象があります。例えば、メーカーの平均年収は、グループ会社をどこまで含むかで簡単に大きく変動するので、単年の値だけで判断するのは浅はかです。従業員数や平均年齢を見るのもぜひ推移に注目してみてください。他にも色々と情報が載っていますので、一度はIR BANKで遊んでみましょう!
企業HPで中計を読む
またもや就活生の方には馴染みのない単語が出てきましたね。中計とは「中期経営計画」のことです。これも企業が投資家向けに出す情報の一部ですが、IR BANKで見る情報が企業の”過去と現在”なのに対して、中計は”未来”となります。「うちの会社はこれから〇〇事業に力を入れていくで~」ということが書いてあります。
これから自分の入ろうとしている会社が、今後どのような事業で儲けようとしているのかを知っておくことは重要です。なぜなら、就活において自身の専門性が強みとなるかが分かるからです。例えば、会社の中計に
「高機能ポリマー事業に力を入れていきます!」
と書いてあるのであれば、高分子系の知識を活かせる場面が多くあることが予想できますし、面接でもアピールポイントとなり得ます。反対に、中計に全く自身の専門性が触れられていないにもかかわらず、面接で専門分野をゴリッゴリに推されて「私は御社で活躍できます!」と言われても、企業側としては「何でウチに応募してきたん?」となってしまいます。また、企業がどんな専門性の人を欲しているかを把握していれば、仮に自身が入社後に希望する分野外に配属された場合のダメージを軽減できるはずです。
もちろん、大きな会社だと中計に書かれている事業のみで経営が成り立っているわけではないので、一概には言えません。そこで、次のテクニックの出番となるわけです。
「会社名」+「キーワード」で特許を調べる
かなりマニアックだとは思います(IR BANKの方がマニアックだろ)が、特許も調べてみましょう。こちらは、会社が保有している技術の今を知ることが出来ます。始めは特許自体を読み込む必要性はあまりなく、特許の数を調べてみてほしいです。ここでヒットした数が多ければ、そのキーワードに力を入れていることが分かります。調べる方法は非常に簡単で「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」や、「J-GLOBAL」でキーワードを放り込んで検索するだけです。もちろん無料です。
J-PlatPat:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
J-GLOBAL:https://jglobal.jst.go.jp/
ここで入れる「キーワード」ですが、次の3つがお勧めです。
・自身の専門分野
・主力製品の化合物名
・中計に書かれている新しい事業分野
専門分野に関してはOKでしょう。面接でイキれるかの判断材料になります(笑)。
「主力製品の化合物名」に関しては疑問に思う方もいらっしゃるかと思いますが、私は自身の専門分野と合わせる事で「勤務地の予想に繋がる」と考えています。例えば、出てくる特許の内容が基礎研究寄りであれば、基礎研究の拠点で生み出された特許であることが分かりますし、プラント技術であれば主力製品の工場敷地内で生み出された特許である可能性が高いです。これを最初に調べた勤務地と照らしあわせて、自身の勤務地を予想していくわけです。ここで耳に入れておきたい情報があります。それは、
「メーカー、何でもかんでも〇〇研究所と名付けがち」問題
です(笑)。理系の学生が真っ先に志望するのは研究分野なので、生産技術を磨くための施設であっても〇〇研究所と名付けておけば、学生の志望度が勝手に上がる、という魂胆が垣間見えます(笑)。研究志望・開発志望どちらの方も、その企業が基礎研究を行っているのはどこなのかは抑えておいた方が良いです。
中計に書かれている事業分野に関しては少し抽象的ですが、企業の本気度を推し量る指標となります。例えば、自身の専門分野が中計に書かれていて、関連する特許が近年多く出されていれば「本気やんけ!」となりますし、それらの特許は必ず読み込んでから面接に挑みましょう。
ここまでの情報を仕込んでいれば、企業研究はかなり進んでいると思いますし、何より実際の面接対策になります。
「自身の専門分野はコレ」
「中計を読んで、〇〇分野に力を入れていることが(特許数からも)分かったので、御社に入って自身の能力を発揮したい」
と言えると、一応ロジック的には変ではないかなと思いますし、志望度が高いアピールになり、また、自身の希望する部署への配属の可能性も高くなると思います。
学会等で従業員から直接話を聞く
これは、今のご時世だと中々ハードルが高いかもしれませんが、是非実践しておいて欲しい項目です。というのも、会社が自ら発表する就活情報は基本良い内容ばかりだからです。これは一部仕方ないです。私も外部への発表を経験したことがあるので分かるのですが、企業にいながら外部へ発表を行うのは非常に面倒くさいのです。大げさではなく、資料を作ったら15個くらいハンコをもらう必要があります(笑)。広報・知財・自部署…ありすぎやて…。そんな中で攻めた内容の資料を作れるでしょうか?私にはできませんでした(笑)。
また、お給料に関しても初任給と平均年収だけからでは、お金がたくさんもらえるかは分かりません。なぜなら、
・ボーナス(賞与)
・福利厚生
が年収に効きすぎるからです。ボーナスが業績連動型でも、労組が強く最低月数が保証されている企業もあれば、完全に業績と連動されている(”0″もあり得る)企業もあります。住宅費補助がどこまで出るかも、企業によってピンキリです。よって、ボーナスと福利厚生だけで年収は100万ほど変動する可能性があります。リアルを聞くには従業員に直接聞くしかありません。
学生の方が従業員と仲良くなるのは難しいですが、得られるものは非常に大きいと断言します。”社風”のようなものも聞き・感じられますし、度胸も付きますし、もしかしたらあなたを人事に推薦してくれるかもしれません。よっぽどの粗相をしなければ、損をすることはまずないので、チャンスがあれば積極的に接触してみましょう。私が参加していた学会では、学生と企業研究者を繋げる催しが開かれていたので、そういった機会はどんどん活用しましょう。私なんて大学で特別講義してもらった方の繋がりを利用して就活を有利に進めましたし(笑)、どこで道が開かれるかは分からないもんです。
最後までお読みいただきありがとうございます。長文になってしまいました。私は企業研究はあまり力を入れてきませんでしたが、特許を読んでいく中で色々な企業の強みに興味が出てきました。今後、この方針で具体的に企業研究をしてみて、企業紹介をしようと思うのですがいかがでしょう?応援してくれる方は、Twitterにて ”いいね”, “フォロー” 等で期待感を知らせていただけると嬉しいです。質問箱もあります。ではでは~。
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